米国政府、新安保戦略で仮想通貨への言及なし|AI・量子に集中

米国政府は5日、2025年の国家安全保障戦略を公表した。
公表された戦略では、人工知能、量子コンピューティング、バイオテクノロジーが世界的なリーダーシップを維持するための基盤技術として優先されている。
これらの分野は「国家の中核的利益」と明確に位置付けられた。
仮想通貨への言及なし
米国は研究開発や人材育成、国際的な基準作りへの投資を通じて、技術的優位性を確保する方針だ。
一方で注目されるのは、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に関する言及が一切なかった点である。
トランプ大統領は以前、仮想通貨を米国の経済的な優先事項として支持する姿勢を示していた。
しかし、今回の戦略文書ではその方針が反映されていない形となった。
技術的焦点と仮想通貨の不在
この技術的な焦点の背景には、主に3つの要因がある。
第一に、戦略的競争の力学だ。AIや量子コンピューティングは軍事的な優位性や経済的な回復力のために不可欠とされている。
特にサイバーセキュリティや高度な兵器システムにおいて、競合国に対抗するための重要な要素となる。
第二に、予算資源の優先順位付けである。
限られた資源は軍事と民生の双方で利用できる「デュアルユース」技術に向けられ、21世紀の安全保障を左右する分野が優先された。
第三に、地政学的連携が挙げられる。
半導体サプライチェーンの確保やインド太平洋地域の同盟国との技術提携が重視され、これらの目標においてブロックチェーンの関連性は低いと判断された。
結果として、金融イノベーションよりも物理的な防衛力や計算能力が優先される内容になった。
新たなドクトリンと今後の展望
今回の戦略には「モンロー主義」へのトランプ氏による補足事項が盛り込まれた。
これは米国の研究資産が外国に搾取されるのを防ぐため、技術的な保護主義を拡大する内容だ。
軍事分野では、「ゴールデンドーム」と呼ばれるミサイル防衛システムへの資金配分や、量子コンピューティングに関連した核戦力の近代化が含まれる。
経済面では、重要技術への外国アクセス制限が中心となる。通常ならブロックチェーン規制と交差する領域だが、今回は対象外となった。
仮想通貨の除外は、政府がより戦略的影響力の大きい技術へ優先的に資源を配分した結果とみられる。
しかし市場では、政府の関与が薄れてもビットコイン(BTC)など非中央集権的資産の価値が変わるわけではないとの指摘もある。
また民間主導の分散型金融(DeFi)の開発は今後も継続される見通しだ。