SEC、仮想通貨規制を大転換「トークンは有価証券でない」

米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は19日、ごく少数の暗号資産(仮想通貨)のみが有価証券に該当するとの見解を表明した。
これは、大半の仮想通貨が有価証券に該当するとしたゲーリー・ゲンスラー前委員長の姿勢から大きく方針を転換するものだ。
SEC、「執行による規制」からの脱却を宣言
アトキンス委員長はワイオミング州で開催されたブロックチェーンシンポジウムで、「トークン自体は『おそらく有価証券ではない』」と明言した。
有価証券に該当するかは「どのようなパッケージで、どのように販売されているか」に依存すると説明している。
同氏は、トークンの購入をオレンジの購入に例え、「オレンジを買う行為は、誰かが収穫し、配当を送ってくれる約束を買うこととは異なる」と述べた。市場で単にトークンを購入する行為との違いを明確にするための例えである。
この発言は、4年間にわたるSECとリップル社の訴訟が両者の控訴取り下げ合意によって終結した直後に行われた。アトキンス氏はこの状況を「特にこの業界にとって新しい時代の幕開けだ」と表現し、SECが執行重視の戦術ではなく、イノベーションを積極的に受け入れる姿勢を強調した。
暗号資産市場の今後と規制の明確化
SECの劇的な方針転換には、複数の要因が影響している。長期化したリップル訴訟の終結は、従来の画一的な仮想通貨規制の見直しを求める直接的な圧力となった。また、この動きは「米国を世界の仮想通貨の中心地にする」というトランプ政権の目標とも一致する。
さらに、連邦準備制度理事会(FRB)のミシェル・ボウマン副議長が規制の不確実性による仮想通貨企業への融資拒否問題を認めたことや、議会での包括的なデジタル資産法案への支持拡大も背景にある。業界団体からの執行措置の緩和要求も、この規制の方向転換を後押しした。
SECは「プロジェクト・クリプト」と名付けた包括的な取り組みを開始した。
このプロジェクトは、ICOやエアドロップなど、デジタル資産に特化した情報開示や免除規定、セーフハーバーを設けることを目的としている。これには、成長著しい分散型金融(DeFi)への対応も含まれる見込みだ。
アトキンス氏はXへの投稿で、「規制の弊害から仮想通貨市場を将来にわたって守る枠組みを構築する」と述べ、議会や政府機関と協力する意向を示した。この発表は、業界から「執行による規制」の時代の終わりを告げるものとして歓迎されている。