米FDIC、デジタル資産へ方針転換|銀行に新時代到来か

仮想通貨規制
暗号資産ジャーナリスト
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米連邦預金保険公社(FDIC)のトラビス・ヒル議長代行は11月、金融機関がデジタル資産分野へ進出する際の規制を明確化するため、「トークン化預金保険」に関する指針を策定中であると述べた。

この動きは、ブロックチェーン技術に対する当局の姿勢が大きく転換していることを示す。

報道によると、ヒル氏は従来の預金をブロックチェーン上に移しても、その法的な性質は変わらないと強調した。

トークン化預金は預金債権をデジタル形式で表現したものであり、法定通貨に価値が連動するステーブルコインとは異なるものである。

預金の法的地位は不変

FDICは「預金は、使用される技術や記録方法にかかわらず預金である」という重要な規制原則を確立した。ヒル氏はこの原則を、米国銀行家協会のワシントンサミットでの講演で明言している

これに伴い、FDICは以前のガイダンス文書(FIL-16-2022)を撤回した。新たなプレスリリースでは、FDICの監督下にある機関が、事前の承認なしに許可された暗号資産(仮想通貨)関連活動に従事できることを明確にしている。

ヒル氏はこの変更を「過去3年間の誤ったアプローチからの転換」と表現した。これは、銀行が安全性と健全性の基準に従い、仮想通貨やブロックチェーン関連活動に取り組むための新たな方針を示す一連の措置の一つとなる。

新指針策定の背景と課題

この指針策定の背景には、複数の要因がある。州監督当局には、預金のトークン化に関心を持つ州法銀行からの問い合わせが増加しているという。

また、決済用ステーブルコイン発行者に関するGENIUS法の制定も、規制の整合性を求める動きを加速させた。

近年の銀行破綻の教訓も大きく影響している。ヒル氏は、シリコンバレー銀行やシグネチャー銀行が大規模な預金流出を経験したと指摘した。

特にシグネチャー銀行は、ブリッジバンクとして運営された1週間で約350億ドル(約5兆4,250億円)の預金が流出した。

この経験から、デジタル引き出しの速さが懸念されている。ヒル氏は、銀行破綻時にブロックチェーンを介した資金の流れを止める技術的能力を確保すべきだと強調した。

スマートコントラクトによって破綻後も資金引き出しが続けば、銀行処理のコストが急増する可能性があるからだ。

今後の規制と業界への影響

州銀行監督者会議(CSBS)は以前から、トークン化預金に関する統一されたガイダンスを求めていた。新しい指針では、分散型台帳技術における預金保険の記録要件や、マネーロンダリング対策(BSA/AML/OFAC)の順守などが明確化される見込みだ。

さらに、24時間365日の償還に対応する流動性リスク管理や、スマートコントラクトを用いたプログラム可能な支払いに関する監督上の期待、消費者保護要件も含まれる。

この包括的なアプローチは、イノベーションを促進しつつ、金融システムの安定性を維持することを目的としている。

例えば、銀行が発行するトークン化預金は、分散型金融(DeFi)プラットフォームでの決済手段として利用されることも想定され、イノベーションの新たな可能性を秘めている。

FDICは連邦準備制度理事会(FRB)や通貨監督庁(OCC)など、他の連邦銀行規制当局とも連携している。この取り組みは、デジタル資産に対するFDICの全体的なアプローチを刷新し、業界に明確な道筋を示すものとして注目される。

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