中国人民銀行、ステーブルコインに金融システムの脆弱性を警鐘

中国人民銀行の潘功勝総裁は27日、ステーブルコインが世界の金融規制の抜け穴を増幅させると述べ、強い警告を発した。
2025年の金融街年次総会で、潘総裁はステーブルコインが「金融システムの弱点を増幅させる」と指摘した。また、マネーロンダリング対策(AML)や顧客確認(KYC)といったコンプライアンス基準を満たしていないと強調している。
複数の金融ニュースによると、潘総裁はステーブルコインが世界の金融安定に重大な脅威をもたらすと述べた。人民銀行は「民間デジタル通貨に対するゼロ・トレランス政策」を再確認し、国内での暗号資産(仮想通貨)の運営と投機に対する取締りを強化し続けると発表した。
デジタル人民元推進とステーブルコインへの警戒
中国は2017年以来、仮想通貨の取引とマイニング活動を全面的に禁止している。今回の声明は、特にステーブルコインがもたらすリスクを重視し、その規制姿勢を継続するものだ。
人民銀行はリスク管理戦略の一環として、海外のステーブルコインの動向を注意深く監視する計画も発表した。この立場は、中国が国内外のデジタル決済の選択肢として、国が支援するデジタル人民元(e-CNY)を長年推進してきた戦略と一致する。
人民銀行の警告は、人民元の国際化推進と民間部門のステーブルコイン革新の台頭が衝突するという、中国の戦略的ジレンマを反映している。中国は米ドルへの世界的な依存を減らそうとしているが、USDCやUSDTのようなステーブルコインは、従来の国際送金に代わるより速く安価な手段を提供し、中国の取り組みを損なう可能性がある。
世界の動動向と中国の金融戦略
人民銀行の懸念は、リアルタイム決済におけるステーブルコインの影響力増大に根差している。公式声明では、「ステーブルコインは世界の決済システムで主要な役割を担い、銀行預金の役割を部分的に代替する可能性がある」と指摘された。
これは中央銀行の金融政策管理能力に対する直接的な挑戦となる。また、特に発展途上国において金融主権を侵食する可能性も地政学的な懸念材料となっている。
人民銀行の警告にもかかわらず、民間企業は世界的にステーブルコイン決済ソリューションを拡大している。香港を拠点とするCLPSは、クレジットカードシステムにステーブルコイン決済機能を統合した。同様に、世界ステーブルコイン決済ネットワーク(WSPN)も電子商取引向けのソリューションを開始している。
一方でウエスタンユニオンはステーブルコイン基盤の決済システムを試験中であり、日本では世界初の円建てステーブルコインが登場し、送金コストを最大95%削減するなど採用が加速している。潘総裁が発表した債券取引の再開計画は、分散型の代替手段を制限しつつ、伝統的な金融ツールを再強化する中国の広範な戦略を示している。