米財務省、仮想通貨の不正取引検出に関する意見募集を開始

米財務省は18日、暗号資産(仮想通貨)を利用した不正活動を検出する革新的な方法について、業界関係者からの意見募集を開始した。
意見は10月17日まで公募され、同省が規制枠組みの研究に活用する予定だ。
背景と法的枠組み
今回の意見募集は、新たに制定された「Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act(GENIUS法)」の規定に基づくものだ。
同法は、財務省に対しステーブルコイン規制の研究と適切な枠組み作りを義務付けている。さらに、この取り組みは「デジタル金融技術における米国のリーダーシップ強化」を掲げた大統領令14178とも整合している。
財務省は特に、金融機関が人工知能(AI)、API、デジタルID認証、ブロックチェーン監視をどのように活用できるかを問うている。また、技術導入の効果やコスト、プライバシーへの影響、サイバーセキュリティ上の課題も検討対象として挙げている。
規制と市場成長の両立
スコット・ベセント財務長官は声明で、ステーブルコインが米国金融システムへの世界的なアクセスを拡大し、財務省証券の需要を高める可能性があると述べた。
同省が収集した意見は、上院銀行・住宅・都市委員会および下院金融サービス委員会に報告される。さらに調査結果に基づき、財務省は新たなガイダンスを策定し、デジタル資産の監視に関する基準を提示する見通しだ。
一方、内国歳入庁(IRS)も不正行為の検出力強化に関心を示しており、複数の機関が連携してデジタル資産規制を進める構図が浮かぶ。
今後の展望と課題
現在、議会ではデジタル資産の課税制度や規制強化策をめぐる議論も進んでいる。具体的には少額取引の免税措置やステーキング報酬の取り扱い、ウォッシュセール規則の適用などが検討課題となっている。
今回の意見募集は、公的機関が仮想通貨市場の急速な拡大に対応し、違法資金の流れを阻止するための重要な第一歩といえる。AIやブロックチェーンといった新技術を活用した検出体制が実現すれば、業界の信頼性向上にもつながる可能性がある。
財務省の取り組みは、単なる規制強化にとどまらず、責任あるイノベーションを促進する方針として位置づけられている。これにより、デジタル資産関連事業者や技術提供者は、新しい枠組みに適応する必要があるだろう。