野村HDなど、国内初「J-Ships」活用のセキュリティトークン発行

野村ホールディングスなどは2日、国内ベンチャーキャピタルファンドへの投資を目的としたセキュリティトークンの発行手続きを完了した。
この取り組みは、野村ホールディングス、野村アセットマネジメント、野村信託銀行、およびBOOSTRYの4社による共同プロジェクトだ。
発行総額は約80億円に上り、国内の金融市場において注目を集めている。
対象となった商品は「野村プライベート・シリーズ B Dash Fund 5号 トークン化VCファンド202510」である。
これは特定投資家向けに譲渡制限が付されたもので、新たな投資スキームとして設計された。
国内初のJ-Ships活用事例
今回の発表で特筆すべき点は、本案件が「J-Ships」(特定投資家向け銘柄制度)を利用した日本初のセキュリティトークン発行であることだ。
また、ベンチャーキャピタルファンドを対象としたセキュリティトークンの発行としても、国内初の事例となる。
J-Ships制度は、証券会社が未上場企業の株式や投資信託を柔軟に取り扱えるようにする枠組みだ。
この制度は、プロの投資家や一定の資産を持つ「特定投資家」を対象としている。
発行基盤には、BOOSTRYが主導するコンソーシアム型ブロックチェーン「ibet for Fin」が採用された。
このプラットフォームを活用することで、受益権の記録や移転が安全かつ効率的に行われる。
投資家へのメリットと背景
従来、VCファンドへの投資は複雑な契約や管理手続きが必要とされていた。
これらが投資家にとって大きな参入障壁となっていたが、ブロックチェーン技術の導入により状況が変化している。
株式の管理や権利移転をデジタル化・自動化することで、事務負担が大幅に軽減される。
これにより、特定投資家にとって新たな投資機会が創出されることが期待されている。
ブロックチェーンの活用は、暗号資産(仮想通貨)の分野で急速に技術革新が進んできた領域でもある。
近年では、仮想通貨投資を行う層も、こうした新しいデジタル証券へ関心を示しているようだ。
将来的には、分散型金融(DeFi)の仕組みを取り入れた金融商品の開発も進むかもしれない。
世界的に見ても、プライベート資産への投資需要は高まっている。
日本の年金積立金管理運用独立行政法人も、2025年3月時点で4兆円以上を同資産に投資している状況だ。
プライベート資産は上場株式とは異なるリスク・リターン特性を持つため、ポートフォリオの効率化に寄与する。
今回のスキームは、こうした資産へのアクセスを技術と制度の両面から支援するものだ。