世界初、ステラ上で国家UBIのオンチェーン配布

マーシャル諸島共和国は16日、ステラ(Stellar)ブロックチェーンネットワークを活用し、ユニバーサルベーシックインカム(UBI)の配布を完了した。
地理的制約の克服と金融包摂
ステラ開発財団によると、これはデジタル発行された国債、USDM1を通じて実施された、世界初のオンチェーンUBI配布となる。
プログラムは11月に開始され、対象市民に対して四半期ごとに直接給付が行われる仕組みだ。
USDM1は、ブロックチェーン上でネイティブに発行された初のデジタル国債であり、短期米国債によって1対1で裏付けられている。
マーシャル諸島は米国との自由連合盟約に基づき米ドルを法定通貨としているため、このデジタル国債は既存の金融枠組みと整合している。
市民は、Crossmintが開発した専用のデジタルウォレットアプリ、Lomaloを通じて、資金に即座にアクセスできるようになった。
これにより、物理的な現金輸送や小切手の到着を待つ必要がなくなった。
マーシャル諸島は24の環礁が広範囲に点在しており、地理的条件が金融インフラ整備の大きな課題となってきた。
財務省は、距離やインフラ制限が住民の生活に直接影響を与えていたと指摘している。
デジタル化以前、遠隔地の市民は小切手や現金の到着を数週間待つ必要があった。
今回のシステム導入により、給付は数秒で完了するようになり、利便性は大幅に向上した。
ステラ開発財団は、USDM1の開発促進のために数百万ドル規模の助成金を提供している。
この取り組みは、従来の銀行サービスが行き届かなかった地域に金融サービスを届ける革新的な金融包摂の事例といえる。
こうしたブロックチェーン技術の活用は、ステーブルコインの普及と並行して、世界的な関心を集めている。
通貨主権と法的枠組みの確立
国際通貨基金は以前、USDM1がリスクを伴う可能性について警告していた。
これに対し、デビッド・ポール財務大臣は、このプログラムが国際的な金融慣行に沿い、信頼性の高い資産に裏付けられていると説明している。
ポール大臣は、USDM1が通貨イニシアチブではなく、あくまで財政分配プログラムであると強調した。
これは国家の通貨主権や技術的主権を損なうものではなく、既存の国内金融システムとの互換性を維持したままインフラを強化する試みだ。
USDM1はブレイディ債の構造を用いて発行され、ニューヨーク州法の下で運用されることで法的な明確性が確保されている。
ステラのデネル・ディクソンCEOは、この取り組みがブロックチェーン技術の本来の目的を体現するものだと評価した。
今後、こうした国家レベルでの実装が広がれば、仮想通貨とは何かという人々の認識も大きく変化していく可能性がある。