フィスコとクシムに課徴金|仮想通貨の価格操作で不正会計認定

仮想通貨事業を手掛けるフィスコおよびクシムは5日、金融商品取引法に基づく開示規制違反があったとして、課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した。
自社コインの価格操作と評価損の隠蔽
証券取引等監視委員会によると、フィスコとクシムは保有する仮想通貨の評価損を適切に会計処理せず、有価証券報告書に虚偽の内容を記載していたとされる。
問題の中心となったのは、フィスコが2016年に発行した独自の仮想通貨「フィスココイン」だ。
同社は2022年6月期の第2四半期において、フィスココインの市場価格が取得原価を大幅に下回っていたにもかかわらず、評価損の計上を見送っていた。
調査の結果、フィスコの元取締役2名が仮想通貨取引所「Zaif」での取引を通じて、フィスココインの価格を人為的に吊り上げていたことが判明した。
本来であれば、操作前の価格である169円を基準に評価すべきだったが、同社は操作によって引き上げられた398円を基に帳簿価額を算出していた。
さらに、取引量が激減し換金が困難になっていたにもかかわらず、価値をゼロまで切り下げず資産として維持していたという。
現行規制の限界と法改正への動き
今回の事案は、日本で仮想通貨の相場操縦が実質的に認定された rare case の一つだ。
しかし処分の根拠は相場操縦そのものではなく、有価証券報告書の「虚偽記載」である。
現行の金融商品取引法では、証券取引等監視委員会は仮想通貨市場の不公正取引に対して直接処分する権限を持っていない。
この“規制の空白”を受け、金融庁は法改正を視野に、仮想通貨取引に対しても課徴金を直接科せる枠組みを検討している。
今回の勧告は、市場の健全化に向けた規制強化の転換点となる可能性がある。
企業の対応と今後の市場への影響
課徴金の額はフィスコが1500万円、クシムが1200万円。クシムは勧告当日に声明を発表し、指摘事実を認め課徴金に争わない方針を示した。
同社は、旧経営陣によるガバナンス機能不全が不正の背景にあったと説明し、法的措置も検討している。
フィスコも決算の訂正と再発防止策の策定を進めている。
自社で発行した仮想通貨の価格を自ら操作するという手口は、投資家の信頼を大きく損なう行為だ。
今後、仮想通貨交換業者やコイン発行体に対する開示義務や監督の厳格化は避けられないだろう。
業界全体では、コンプライアンス体制の見直しや透明性向上が求められている。
これらの取り組みはビットコイン(BTC)市場をはじめとする仮想通貨市場全体の健全な発展に不可欠となる。