ブータン、水力発電でビットコインマイニング|GDP40%規模

ブータン政府は17日、豊富な水力発電資源を活用したビットコインマイニング事業の詳細と、その経済的効果について報告した。
同国は余剰電力をデジタル資産へ転換することで、独自の経済モデルを構築している。
水力発電を活用した国家戦略
ブータンは国家主導でビットコイン(BTC)のマイニング事業を推進している。
この取り組みは、同国が有する豊富な水力発電資源を背景に、余剰エネルギーを有効活用する目的で始まった。
報道によると、ブータンは12月時点で約11,400ビットコインを保有している。
現在の市場価格を基にすると、その価値は約14億ドルに相当し、同国の国内総生産(GDP)の約40%に達する規模だ。
このマイニング事業は、政府系投資会社であるDruk Holdings and Investments(DHI)が主導している。
DHIは2019年からデジタル資産を国家ポートフォリオに組み込み、2020年以降は事業規模を本格的に拡大させてきた。
特に雨季には河川の水量が増加し、国内需要を大きく上回る電力が発生する。
この余剰電力をマイニングに充てることで、電力を無駄にすることなく資産価値へ転換する仕組みが確立された。
環境資源を活かした仮想通貨マイニングの先進事例として注目されている。
経済多角化と雇用創出への期待
ブータンがマイニング事業に力を入れる背景には、国内経済が抱える構造的課題がある。
若年層の国外流出が続いており、教育を受けた若者の10%以上が就労機会を求めて海外へ移住している。
政府はこの流れを食い止めるため、ブロックチェーンや人工知能といった先端分野での雇用創出を重視している。
ビットコインマイニングは、若者に対する技術教育や高度人材育成の場としても位置付けられている。
また、観光業や農業への依存度を下げ、経済構造を多角化する狙いもある。
パンデミック以降、観光収入の不安定さが顕在化したことで、新たな収益源の確保が急務となっていた。
かつて余剰電力は隣国インドへ低価格で輸出されていたが、マイニングに転用することで、より高い付加価値と収益性を生み出せることが実証されている。
持続可能な開発と国民への還元
マイニングによって得られた収益は、国民生活の向上にも直接活用されている。
政府関係者によると、収益の一部は公務員の給与引き上げなどの財源として充当されたという。
さらに政府は、新たな経済拠点として構想されているGelephu Mindfulness Cityの開発に、10億ドル相当のビットコインを投じる計画を明らかにした。
現在、ブータンは週に約55~75ビットコインを新たに生成しており、これは週あたり360万~490万ドルの収益に相当する。
将来的には、水力発電能力を現在の3.5ギガワットから、15年以内に15ギガワットへ拡大し、最終的には33ギガワットを目指す計画だ。
これにより、マイニング能力と国家収益のさらなる向上を図る。
ブータン国王もデジタルインフラへの投資を強く支持している。
環境に配慮しながら経済的な回復力を高めるこのモデルは、持続可能な開発の新たな形として注目されている。
国家が主導する仮想通貨投資の成功例として、今後の動向が注視される。