日銀が追加利上げを示唆|円キャリー巻き戻しでBTCに警戒感

日本銀行の植田和男総裁は25日、都内で開かれた経団連審議員会で講演し、経済・物価情勢の改善が続けば政策金利の引き上げを継続する方針を改めて示した。
日銀は19日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%から0.75%へ引き上げており、これは1995年以来30年ぶりの高水準となる。
市場では今後も利上げが続くとの見方が広がる中、円キャリートレードの巻き戻しによる暗号資産(仮想通貨)市場への影響が警戒されている。
30年ぶりの金利水準と追加利上げ観測
今回の利上げにより、日本の政策金利は1995年9月以来の高水準に達した。
長らく続いたマイナス金利政策からの転換が鮮明となっている。
植田総裁は講演で「賃金と物価がほとんど変化しないゼロノルムの世界に戻る可能性は大きく低下している」と述べ、賃金・物価の持続的上昇に手応えを示した。
2026年の春闘に向けた賃上げの勢いや、2%の物価安定目標の実現が着実に近づいていることが利上げの判断材料となっている。
日銀は景気を熱しも冷やしもしない「中立金利」の水準を1%〜2.5%程度と推計している。
野村證券は2026年前半に追加利上げが行われる可能性を指摘しており、政策金利が1%に到達する時期を2027年7月と予測している。
円キャリートレード解消と仮想通貨への影響
日本の金利上昇は、仮想通貨を含む世界の金融市場に波紋を広げる可能性がある。
特に懸念されているのが円キャリートレードの巻き戻しだ。
円キャリートレードとは、金利の低い円を借り入れ、ビットコイン(BTC)など高利回り資産で運用する手法を指す。
日本の超低金利環境が長期間続いたことで、この取引は活発化してきた。
しかし政策金利が0.75%まで上昇し、さらなる引き上げが示唆されたことで円の調達コストは増加している。
2024年7月の日銀利上げ後、同年8月初旬にはビットコインが20%急落した前例もある。
投資家がポジションを解消し、借り入れた円を返済する動きが加速すれば、運用先となっていた資産の売却圧力が高まる。
一方、FRBが量的引き締めを終了したことでグローバルな流動性環境の改善も期待されており、日銀の段階的な利上げと組み合わさることで影響は限定的にとどまるとの見方もある。