日本と韓国が主導するステーブルコイン市場|米ドル依存からの転換

アジアのステーブルコイン市場はこのほど、大きな変化を見せている。2025年を経て市場の構図は1年前とは明確に異なる様相を帯びている。
テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といった米ドル建てステーブルコインが、依然としてオンチェーン上の流動性を主導している点に変化はない。
一方で、各国の政策立案者や銀行、暗号資産企業の間では、米ドル一極依存からの脱却を目指す動きが加速している。
こうした流れの中、東京やソウルでは、戦略的な方向転換を示す規制整備や関連プロジェクトの立ち上げが相次いでいる。
TRM Labsのアンジェラ・アン氏は、政策立案者が現地通貨建てステーブルコインの発行を推奨していると指摘する。
背景には、国内の金融システムがオンチェーン経済への移行から取り残される事態を回避する狙いがあるとしている。
日本と韓国で加速する法定通貨連動ステーブルコインの実用化
日本と韓国は、アジアにおけるステーブルコイン市場の変化を象徴する存在となっている。日本では、フィンテック企業のJPYCが10月、法的裏付けを備えた円建てステーブルコインを発行したと発表した。
これに加え、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクも実証実験を開始している。対象は決済や銀行間取引、機関投資家向けサービスで、金融庁は12月にこれらの取り組みを支援する姿勢を示した。
金融コングロマリットも新興分野での存在感強化に動いている。SBIホールディングスは、ブロックチェーン企業のStartaleと提携し、ステーブルコインの発行やインフラ整備に取り組む計画を明らかにした。
HashKey Groupのティム・サン氏は、日本が円安の進行を背景に、通貨の国際的な地位を維持する手段を模索していると分析する。円建てステーブルコインは、デジタル経済における円の役割を再定義する契機になるとの見方を示した。
韓国でも、ウォンに連動するステーブルコインの動きが広がっている。9月にはカストディ企業のBDACSが、アバランチネットワーク上でKRW1を発行し、送金や決済分野での活用を進めている。
さらに10月には、コインベースのBaseネットワーク上でKRWQが登場した。カカオバンクも開発段階に入り、複数のブロックチェーンを活用した実証が進められている。
これらの取り組みは、将来的なDeFi分野との連携も視野に入れたものとなっている。
各国通貨建てステーブルコインの現実的な役割
こうした動きが直ちに本格的な普及へとつながるかについては、慎重な見方も根強い。
TRM Labsのアンジェラ・アン氏は、市場活動の歴史がまだ1年未満であり、実質的な採用状況を評価するには時期が早いとの認識を示している。
また、EX.IOのチェン・ウーCEOは、世界貿易における米ドルの基軸的役割が維持される限り、各国通貨建てステーブルコインの影響は限定的にとどまると指摘する。
市場データも、米ドル建て銘柄が依然として圧倒的な優位を占めている現状を示している。
CoinGeckoのデータによると、ステーブルコイン市場全体の規模は約3120億ドルに達するが、その97%以上を米ドル建てが占める。一方、円建てステーブルコインの時価総額は約1640万ドルにとどまっている。
こうした中、OSL Researchのエディ・シン氏は、決済インフラとしての実用面に注目する。
日本や韓国の通貨連動型ステーブルコインは、米ドルの代替を目的とするものではなく、クロスボーダー送金や地域貿易といった実需に対応する設計が特徴だと説明する。
実際、シンガポールのXSGDやフィリピンのPHPCは、東南アジアにおける送金フローの中で活用が進んでいる。これらは各国の金融制度や貿易構造に適合させるため、多通貨化を進める動きの一環と位置づけられる。
シン氏は、2026年にかけて北東アジアおよび東南アジアが、多通貨ステーブルコインによる決済回廊としての役割を強めていくとの見通しを示した。単なる取引トークンではなく、決済手段としての機能拡張が重視されている。
こうした実需ベースでの展開は、仮想通貨の実用性を押し上げる重要な段階に位置づけられる。