仮想通貨取引所Gemini、増収も株価が上場来安値を更新

暗号資産(仮想通貨)取引所Geminiは9日、2025年第3四半期の決算を公表した。売上高が大幅に増加した一方で、同社株価は上場来安値を更新した。
Geminiの株価は9日の取引で一時14.75ドルまで下落し、終値は16.20ドルとなった。これは新規株式公開時の価格を大幅に下回る水準である。
ナスダック上場時には株価が公開価格を上回り、時価総額は約44億ドルに達したが、その後は投資家の慎重な姿勢を背景に下落傾向が続いていた。
増収とは裏腹に拡大する純損失
Geminiの2025年第3四半期決算によると、売上高は前期比52%増の5062万ドルに達した。
しかし純損失は1億5950万ドルに拡大し、1株あたり6.67ドルの損失を計上した。
2025年上半期の純損失は2億8300万ドルで、前年同期の損失4140万ドルから580%以上増加している。
米国証券取引委員会への提出書類によれば、この損失拡大は「IPO関連の株式報酬費用およびマーケティング費用の増加」に起因する。
収益モデルへの懸念と今後の展望
Geminiの収益構造は依然として取引手数料に大きく依存しており、総収益の約70%を占める。
これにより、仮想通貨市場のボラティリティに対して脆弱な体質が残っている。マクロ経済の不透明感や規制リスクも投資家心理を圧迫している。
一方で、事業運営の一部には明るい兆しも見られる。
第3四半期の総取引高は前期比45%増の164億ドルとなり、過去数年で最高を記録した。
主要取引銘柄は引き続きビットコイン(BTC)だが、月間アクティブトレーダー数も増加傾向にある。
さらに同社はマルタで暗号資産市場規制ライセンスを取得し、欧州経済領域30カ国での事業展開を可能にした。
ウィンクルボス兄弟は株主への書簡で「地域分散と新規事業の拡大」を強調している。
ただし、アナリストの間では持続的な収益性を確立できるかについて懐疑的な見方が強い。
投資家はGeminiが他の大手仮想通貨取引所との競争にどう対応していくのか、その戦略に注目している。