金融庁、仮想通貨の販売所誘導を懸念|5兆円市場の規制強化へ

日本の金融庁は25日、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の報告書(案)を公表した。
国内の暗号資産(仮想通貨)市場は延べ1300万口座を超え、預託金残高は5兆円以上に達している。
月平均350件以上の苦情相談が寄せられる現状を踏まえ、従来の資金決済法から金融商品取引法への規制移行を軸とした利用者保護の強化を目指す。
販売所への誘導懸念と最良執行義務
報告書案では、暗号資産交換業者のビジネスモデルについて踏み込んだ記述がみられた。
多くの交換業者は顧客同士の注文をマッチングする「取引所」と、業者が相手方となる「販売所」を併設している。
報告書案は、取引所より収益性の高い販売所での取引へ顧客を誘導しているのではないかとの懸念を指摘。
アプリのユーザー・インターフェース上で販売所へのアクセスを容易にする一方、取引所への動線が利用者にとって分かりにくくなっているケースがあるという。
金商法には「最良執行義務」が設けられており、顧客にとって最良の条件で注文を執行する方針と方法を定めて実施することが求められる。
報告書案はこの観点から、交換業者による顧客へのサービス提供が適切かどうか検討されるべきと述べている。
ユーザー側も信頼性の高いおすすめ仮想通貨取引所を選び、自衛することが重要になる。
弁済原資の確保と責任準備金制度
利用者保護の強化策として、交換業者に対する責任準備金の積立義務化も盛り込まれた。
常時インターネットに接続していないコールドウォレット等以外の方法で管理される暗号資産について、履行保証暗号資産により補償原資を確保することとされている。
コールドウォレットで管理する暗号資産についてもハッキングによる流出リスクがあり、顧客への補償を適切に行うための備えが必要だと報告書案は指摘する。
近年のサイバー攻撃では、ソーシャルエンジニアリングなど手口の巧妙化が進んでおり、コールドウォレットだから安全という状況ではなくなっている。
国家による攻撃者も存在し、スタートアップを中心とした一般事業会社が単体で対処できる水準ではないとの認識も示された。
金商法への移行で変わる規制の枠組み
報告書案は暗号資産を「有価証券とは別の規制対象」として金商法に位置付ける方針を示した。
将来性が高いビットコイン(BTC)をはじめとする主要銘柄を含め、現行の資金決済法上の暗号資産が対象となる。
インサイダー取引規制や課徴金制度の導入、情報開示義務の強化など、有価証券並みの厳格な規制を適用する。
無登録業者への対応を強化し、緊急差止命令など金商法のエンフォースメントを活用して詐欺的な投資勧誘等を抑止する狙いがある。
金融庁は今後も議論を重ね、2026年の通常国会への法案提出を目指す。
新しい仮想通貨市場の健全な発展と利用者保護の両立が問われることになる。