米FSOC、仮想通貨をリスク除外|25年報告書で方針転換

米国金融安定監視評議会(FSOC)は10日、2025年の年次報告書を公表し、暗号資産(仮想通貨)とステーブルコインに対する従来の厳しい姿勢を緩和した。
FSOCは今回の報告書で、仮想通貨とステーブルコインを金融システムの脆弱性リストから除外した。
これらのデジタル資産は過去3年間にわたり同リストに含まれており、今回の決定は大きな方針転換と受け止められている。
GENIUS法の施行と規制の明確化
報告書によると、デジタル資産はもはや特別な規制上の注意を要する優先的なリスク領域とは見なされていない。
これまで発せられてきた広範な警告も撤回され、銀行機関による関与が容認される方向へと進んでいる。
2022年から2024年にかけて、FSOCはステーブルコインが取り付け騒ぎに対して脆弱であると警告してきた。
しかし、2025年版の報告書ではこうした記述が姿を消しており、規制当局の認識が変化したことを示している。
今回の評価変更の背景には、7月に施行されたGENIUS法の存在がある。
同法は決済用ステーブルコインに関する包括的な連邦規制の枠組みを確立し、市場に透明性をもたらした。
GENIUS法では、100%の準備金保有義務や、連邦準備制度理事会、通貨監督庁などによる監督が盛り込まれている。
これにより、ステーブルコインは未規制のリスク要因ではなく、制度の下で管理される決済手段として位置付けられた。
さらに、1月にはSECの職員会計公報121が撤回された。
これにより、銀行がカストディ中の暗号資産をバランスシート上の負債として計上する必要がなくなり、機関投資家の参入障壁が大きく低下した。
報告書は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)の現物ETFが順調に機能している点も、市場が秩序ある成長段階に入った証拠として挙げている。
規制された金融商品への統合が進んだことで、システミックリスクは軽減されたとの認識だ。
ドルの覇権維持と継続的な監視
注目すべき点として、FSOCはドル建てステーブルコインの拡大が、今後10年間にわたり米ドルの国際的地位を支える可能性があると指摘している。
デジタル資産を、ドルの覇権を維持するための戦略的ツールとして評価し始めていることがうかがえる。
一方で、マネーロンダリングや制裁回避といった不正金融リスクについては引き続き警戒姿勢を維持している。
FSOCは、これらの分野においては継続的な監視と法執行が不可欠であると強調しており、完全に警戒を解いたわけではない。
また、世界的な規制の足並みには依然として課題が残ると指摘された。
金融安定理事会によれば、仮想通貨市場の規模は約4兆ドルに拡大しているが、国際基準の実装にはばらつきがあるという。
今回のリスク評価の引き下げは、市場の安定が継続することを前提としている。
現物ETFへの資金流入が続き、大規模なカストディ破綻などが発生しない限り、この新たな評価基準が維持される見通しだ。