パクソス、PayPalと提携しステーブルコインUSDHの決済統合へ

ステーブルコイン発行元パクソスは10日、グローバル決済大手PayPalとの新たな提携を含む、ステーブルコイン「USDH」の成長戦略「USDH提案V2」を発表した。
この戦略では、PayPalが2000万ドル(約29億4000万円)の資金を投じ、4億人以上のユーザーを持つペイパルおよびVenmoのエコシステムにUSDHを統合することで、ステーブルコインを分散型金融(DeFi)の領域を超えた主流決済手段へと押し上げることを目指す。
PayPalとの提携で主流決済への道を拓く
パクソスの新戦略の根幹は、PayPalの広範な決済ネットワークとの連携にある。
年間147兆円の取引を処理するPayPalの巨大なユーザー基盤を活用することで、USDHを既存の金融システムに本格的に組み込むことが狙いだ。
この提携には、USDHとHyperliquidのネイティブトークン「HYPE」をPayPalとVenmoに上場させる計画が含まれる。
さらに、USDHの入出金手数料を無料化することで、ユーザーの利便性を高め、利用拡大を促進する。
パクソスは、USDHの総ロック資産額(TVL)が10億ドルに達するまで手数料をゼロとし、50億ドルを超えても報酬は5%を上限とする透明性の高い収益モデルを提示。
発生した手数料はすべてHYPEトークンで再投資され、Hyperliquidの成長と密接に連動する設計となっている。
規制準拠とエコシステム成長の両立
今回の提案は、規制への対応と持続的なエコシステム成長という、暗号資産(仮想通貨)業界が直面する二つの課題を解決するアプローチだ。
パクソスは、米国で規制されたステーブルコイン発行者としての地位を強みとし、Hyperliquidのコンプライアンス課題を補完する役割を担う。
特に、欧州で施行される仮想通貨市場規制「MiCA」への準拠は、USDHが欧州市場で即座に拡大する上で戦略的な優位性をもたらす。
パクソスは昨年、ニューヨーク州金融サービス局との間で、マネーロンダリング対策の不備を理由に71億円を超える和解金を支払った経緯がある。
成功報酬型の収益モデルとPayPalからのインセンティブは、パクソスの目標をHyperliquidの普及と一致させ、エコシステムの持続可能性を高める構造となっている。
この新たな枠組みは、当初の構想から大きく進化しており、具体的な提携先の確保がその実現可能性を大きく高めている。