パクソス、バイナンス提携巡るNYDFS和解で71億円支払いへ

ステーブルコイン発行企業パクソス・トラスト・カンパニーは7日、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)との間で、4,850万ドル(約71.3億円)の和解に合意した。
この和解は、かつての提携先であるバイナンスに対するデューデリジェンスの不備と、マネーロンダリング防止(AML)プログラムの欠陥が指摘されたことに起因する。
ステーブルコインBUSDと提携問題
パクソスは2019年から2023年にかけて、バイナンスUSD(BUSD)を発行していた。BUSDは最盛期には時価総額230億ドル(約3.38兆円)を誇る主要なステーブルコインだったが、2月にNYDFSがパクソスに対してコンプライアンス上の欠陥に関する調査を開始し、新規発行停止を命じた。
今回の和解金には、バイナンスに対するデューデリジェンスの不足とAML保護措置の不備に対する罰金2,650万ドル(約38.9億円)が含まれる。
さらに、パクソスはコンプライアンス基盤の向上に2,200万ドル(約32.3億円)を投じることを約束。これにより、顧客確認(KYC)や取引監視、調査プロトコルといった内部管理体制を強化する。
組織的欠陥と規制当局の監視強化
NYDFSは今回の措置を通じ、規制外の海外事業者との提携に対する監視を強化する姿勢を鮮明にした。
世界最大級の仮想通貨取引所であるバイナンスは、米国の利用者が地域制限を回避することを黙認していたとされ、このことが提携関係にあったパクソスを不正行為のリスクに晒していた。
調査では、2017年から2022年にかけて、制裁対象団体との取引を含む16億ドル(約2,352億円)の不正資金がバイナンスを経由していたことが明らかになった。
NYDFSは、パクソスのコンプライアンスプログラムに組織的な弱点があり、複数の利用者が検知を回避するような不正行為を検出できていなかったと指摘している。
今回の事例は、業界大手であってもコンプライアンス上の課題を抱える可能性を示唆し、利用者が信頼できる取引所を慎重に選ぶ重要性を改めて浮き彫りにした。