ソラナ創設者が警鐘、イーサリアムL2の中央集権化リスクとは

ソラナ(SOL)のアナトリー・ヤコヴェンコ共同創設者は27日、イーサリアム(ETH)のL2ソリューションのセキュリティモデルに疑問を呈した。
同氏によると、多くのL2ネットワークは複数署名(マルチシグ)に依存した中央集権的な許可型構造となっており、少数の管理者がユーザーの同意なくブリッジコントラクトを変更・操作できる危険性を孕んでいるという。
ヤコヴェンコ氏はさらに、この仕組みがかつてハッキング被害を受けたクロスチェーンブリッジなどと本質的に同様の脆弱性を抱えていると指摘。L2の安全性に対する根本的な再考を促した。
L2はイーサリアムのセキュリティを継承していない
ヤコヴェンコ氏は、イーサリアムのL2ソリューションが「メインネットのセキュリティを継承している」とする一般的な見方に異を唱えた。
同氏は、複雑なガバナンス構造がリスクを軽減するとの主張を否定し、外部キーを通じてユーザー資金が管理される仕組み自体に根本的な脆弱性が残ると強調。安全性の担保には至っていないと述べた。
また、現在の多くのL2では、マルチシグによってシーケンサーの権限が実質的に定義されており、少数の管理者が取引順序やブリッジ操作を支配できる構造になっているという。
ヤコヴェンコ氏は、こうした仕組みによりL2はイーサリアム本体が持つ堅牢なセキュリティの恩恵を十分に受けられず、セキュリティ上のリスクが残存していると指摘。さらに、この問題はコインベースが支援するBaseチェーンなど、主要L2にも共通する課題だと警鐘を鳴らした。
急成長の裏にある中央集権化とエコシステム間の競争
この議論の背景には、暗号資産(仮想通貨)市場で急速に拡大するレイヤー2(L2)エコシステムの存在がある。
現在、120を超えるL2が乱立し、流動性とセキュリティが断片化。監査の複雑化や攻撃対象の増加といった副作用を生んでいる。
Binance Researchの分析によれば、L2の台頭はイーサリアムL1の手数料収入を侵食しており、開発競争を一層過熱させている。
その一方で、多くのL2がスケーラビリティを優先し、中央集権的なシーケンサー管理やアップグレード可能なコントラクトを採用。これにより「非中央集権性とのトレードオフ」が顕著になっている。
ヤコヴェンコ氏の発言は、こうしたL2の構造的問題を浮き彫りにするものであり、同時に将来性のあるソラナが掲げる「単層型・高性能ブロックチェーン」という代替モデルを際立たせる戦略的意図も見て取れる。
一方、イーサリアム陣営は反論している。
L2には強制的なトランザクション包含機能など、メインネットのセキュリティを補完する仕組みが存在すると主張。ヴィタリック・ブテリン氏も、リスクを認めつつもL2の技術進歩を「不可欠なスケーリング手段」として擁護している。
こうした専門家の応酬は投資家心理にも波及しており、L2関連トークンへの資金配分に慎重姿勢をとる動きも見られる。
今回の論争は、ブロックチェーンが抱える「スケーラビリティとセキュリティの両立」という永遠の課題を改めて浮き彫りにしたといえる。