イーサリアム財団、レイヤー2を横断する新基盤「EIL」公表

イーサリアム財団は18日、複数のレイヤー2(L2)を統合する新構想であるイーサリアム相互運用性レイヤー(EIL)を公表した。
これは、これまでのスケーリング重視の開発方針から、L2間の分断解消へ重点を移す戦略転換となる。
現在はアービトラム(ARB)やポリゴン(POL)など多数のL2が乱立し、資産や流動性が分散してユーザー体験が複雑化している。
EILにより、ユーザーは複雑な手順なしでL2を跨いで資産を扱えるようになり、まるで単一チェーンを使用しているかのような操作感が実現する見込みだ。
財団は、セキュリティを保ちつつL2間の障壁を取り除くことで、エコシステムの使いやすさを大幅に高めることを狙っている。
相互運用性を高める技術的アプローチ
財団が提案するEILは、信頼性を担保しつつ検閲耐性を持つ転送レイヤーとして機能する。
イーサリアムはスマートコントラクトを実装したプラットフォームであり、L2はそのスケーラビリティを向上させるものだ。
具体的には、ERC-7828やERC-7683といった新しい規格を開発し、異なるロールアップ間での仮想通貨ウォレットの挙動や取引の流れを統一する方針だ。
これにより、ユーザーはどのL2ネットワークを使用しているかを意識することなく、シームレスにサービスを利用できるようになる。
開発は「初期化」「加速」「完了」の3つの並行トラックで進められる。
初期段階では「オープン・インテンツ・フレームワーク」が導入され、ユーザーは技術的な経路を指定するのではなく、「資金を移動したい」という結果を指定するだけで操作が完了する仕組みが構築される。
取引速度の改善と今後のロードマップ
ユーザー体験を向上させるための重要な要素として、取引速度の大幅な改善も掲げられている。
現在のL2ネットワークとメインネット間の取引確認には平均で約19分を要しているが、財団はこれを劇的に短縮する計画だ。
新たな確認ルールの導入により、2026年初頭までに確認時間を15秒から30秒程度にまで縮めることを目標としている。
また、ヴィタリック・ブテリン氏は、L2からの出金にかかる待機期間を現在の7日間から1〜2日に短縮する提案も行っている。
これらの改善は、エコシステム全体の資本効率を高め、これまで実現が難しかった新しい金融商品の開発を促進する可能性がある。
一例として、より安全かつ迅速に移動できるステーブルコインの活用が期待される。一連の取り組みは、アルゼンチンで開催予定の開発者イベントであるDevconnectでもさらに議論される予定だ。