バイナンス、BBVAと提携|顧客資産分離の新カストディ開始

暗号資産(仮想通貨)取引所大手のバイナンスは8日、スペイン第2位の金融機関であるBBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)と提携し、取引所外での資産保管サービスを開始することが明らかになった。
新サービスでは、顧客資産をBBVAが保管し、バイナンスの運営資金とは法的に分離。BBVAは米国債として資産を保持するため、分離管理が明確に担保される。
また、バイナンスはBBVAに預けられた米国債を証拠金として活用できる点が特徴で、従来の金融システムと仮想通貨取引を融合させる革新的なモデルとなっている。
伝統金融と仮想通貨の融合、新たな資産保管モデル
バイナンスは2023年末、マネーロンダリング対策違反で米国規制当局と和解したのを機に、事業モデルを転換。すでに独立型のカストディ(資産保管)ソリューションを導入し、資産保護体制を強化してきた。
2024年初頭には、スイスのSygnum銀行やFlowBankといった第三者カストディアンの利用も許可。今回のBBVAとの提携は、こうした取り組みをさらに発展させたもので、機関投資家が懸念するカウンターパーティリスクを低減し、手数料無料で利用できるカストディサービスを提供する。
伝統金融と仮想通貨エコシステムを融合させた先進的な事例として、業界内外の注目を集めている。
規制強化と市場の変化が促した戦略的提携
今回の提携には、複数の背景要因がある。最大の契機は2022年のFTX破綻だ。破綻では顧客資金と取引所資産が混同され、多額の損失が発生。この事件以降、業界全体で資産の明確な分離管理が強く求められるようになった。
さらに、米国や欧州連合による規制圧力も高まり、特にEUの暗号資産市場規制(MiCA)によって資産保管やマネーロンダリング対策の指針が整備された。
BBVAはデジタル資産事業を加速させ、3月にスペインで個人向け仮想通貨サービスの認可を取得。今回の提携は、その強みを生かし同業他社との差別化を図る戦略でもある。
一方、バイナンスは、2023年11月に米国規制当局と43億ドルで和解し、顧客保護措置の強化が必須となった。
市場は今後、年平均約25%成長し2兆5000億ドル規模に拡大すると予測されており、この提携は世界の取引所とカストディアンの新たな関係モデルとなる可能性を秘めている。
この動きは、機関投資家が安心して仮想通貨投資を行える環境整備の一環であり、市場の成熟を促進する狙いがある。