仮想通貨ハードフォークとは?特徴やリスクをわかりやすく解説

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Hiroshi OnoVerified
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Dec 2023
筆者について

埼玉県出身。2018年に仮想通貨投資を開始し、NFTへの投資経験も持つ。20年からは個人ブロガーとして活動し、400近い記事を執筆。23年よりライターとしてのキャリアをスタートし、23年12月、Crypto...

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ハードフォークとは、暗号資産(仮想通貨)の基盤技術であるブロックチェーンの仕様変更により、互換性のない新しいチェーンが永久に分岐することです。

この分岐により、元の仮想通貨とは別に新しい仮想通貨が誕生することがあり、投資家にとっては新たな収益機会として注目されています。

本記事では、ハードフォークの全体像を以下の3つの視点からわかりやすく解説します。

  • ハードフォークとは何か、仕組みを解説
  • ハードフォークのメリット・デメリット
  • ハードフォークの過去の代表的な事例

仮想通貨の仕組みであるハードフォークは、一見複雑に思えるかもしれません。しかし、今後の資産運用に仮想通貨を取り入れるなら、知っておきたい知識です。ぜひ最後までご覧ください。

本記事の要約
  • ハードフォークとは、仮想通貨のルールを大幅に変更し、コインを分裂させて新しい種類を生むこと
  • 性能向上などを目的にハードフォークは行われるが、コミュニティが分裂する副作用もある
  • ハードフォークが起きると、新しいコインがもらえる一方、価格が乱高下するリスクがある

仮想通貨ハードフォークとは?


ハードフォークでブロックチェーンが分岐する仕組みの図解

仮想通貨のハードフォークとは、基盤技術であるブロックチェーンの仕様を変更するアップデートの意味です。

このアップデートにより、古いルールと新しいルールに互換性がなくなるため、ブロックチェーンが永久に分岐し、新しい仮想通貨が誕生することがあります。

ハードフォークは、仮想通貨システムにとって大きな影響を及ぼすイベントであり、主に以下のような目的があります。

  • スケーラビリティ問題の解決
  • セキュリティの向上
  • 新機能の追加

このように、ハードフォークは仮想通貨が抱える課題を解決し、より安全で便利なシステムへと成長する意味で行われます。

ハードフォークの仕組み

ブロックチェーンは、取引データが記録されたブロックが鎖のように連なった分散型台帳です。特定の管理者が存在せず、不特定多数のネットワーク参加者(ノード)によって運営されています。

ハードフォークとは、この「記録帳のルールを根本的に変更する」一大イベントです。これは、後戻りできない大きな仕様変更であり、ネットワークの参加者は新しいルールに従うか、古いルールに留まるかの選択を迫られます。

このルールの変更によって、ブロックチェーンが分岐するプロセスは以下のようになります。

  • 新しいルールに賛同するグループ:ソフトウェアを最新版に更新し、新しいルールに基づいて取引を記録し始めます。
  • 古いルールを支持するグループ:ソフトウェアを更新せず、これまでの古いルールのまま取引を記録し続けます。

その結果、ある時点から記録帳が2つの系統に分かれてしまいます。これがブロックチェーンの「分岐」です。

ハードフォークの最大の特徴は、この分岐が永久的である点です。新旧のルールに互換性がないため、一度分岐したブロックチェーンは二度と交わることがありません。

そして、多くの人々が新しいルールの方を支持し、そちらのブロックチェーンに価値があると認められると、それが全く新しい仮想通貨として誕生し、おすすめの仮想通貨として取引されることになるのです。

ハードフォークとソフトフォークの違い

ブロックチェーンの仕様変更には、ハードフォークの他に「ソフトフォーク」と呼ばれる方法もあります。両者は仮想通貨のルールを変更する点では同じですが、その適用方法に大きな違いがあります。

ハードフォーク ソフトフォーク
互換性 旧ルールとの互換性がない(後方互換性なし) 旧ルールとの互換性がある(後方互換性あり)
ブロックチェーンの分岐 永久に分岐し、元に戻らない 一時的に分岐するが、いずれ一つに収束する
影響 新しい仮想通貨が誕生する可能性がある 通貨の分裂は起こらない
具体例 ブロック容量の拡大 取引データの縮小(Segwit)

簡単に言えば、ハードフォークの意味は「強制的な大型アップデート」、ソフトフォークは「任意参加の小規模なアップデート」とイメージすると分かりやすいでしょう。

ソフトフォークは、古いルールのノードも新しいルールのブロックを承認できるため、ブロックチェーンの分岐は一時的です。

一方、ハードフォークは古いルールのノードが新しいルールのブロックを承認できないため、チェーンが完全に分かれてしまいます。

ハードフォークのメリット


2つのブロックチェーンとハードフォーク

ハードフォークの主なメリットについて、以下の3つをわかりやすく解説します。

  1. スケーラビリティ問題を解決できる
  2. セキュリティ向上や機能追加ができる
  3. コミュニティの意思を反映できる

①:スケーラビリティ問題を解決できる

ハードフォークの大きなメリットは、仮想通貨の利用者が増えることで生じるスケーラビリティ問題を解決できる点です。

スケーラビリティ問題とは、取引量の増加にブロックチェーンの処理能力が追いつかず、送金の遅延や手数料が高騰する現象を指します。例えばビットコインは、ブロックサイズの上限が1MBであるため、取引が急増すると処理詰まりを起こしやすくなります。

ハードフォークでは、このブロックサイズを拡張するなどシステムの根本ルールを変更できます。

実際に、ビットコインから分裂したビットコインキャッシュ(BCH)は、ブロックサイズを大幅に拡張し、一度に多くの取引を処理することでこの問題の解決を目指しました。

②:セキュリティ向上や機能追加ができる

ハードフォークは、仮想通貨のセキュリティを強化し、新たな機能を追加するための重要なアップデート手段です。

その目的の一つが、セキュリティ向上です。ハッキング被害など、システムに致命的な欠陥が見つかった際の「最終手段」として実行されることがあります。

代表例は、イーサリアムの「The DAO事件」です。このハッキングによる巨額の資金流出を無かったことにするためハードフォークが実施され、現在のイーサリアム(ETH)が誕生しました。

また、ハードフォークは、時代のニーズに合わせて仮想通貨を進化させる目的でも行われます。これにより、仮想通貨の価値を高め、利便性を向上させることができます。具体的な例は以下の通りです。

  • スマートコントラクト機能の導入・拡張
  • プライバシー(匿名性)機能の強化
  • コンセンサスアルゴリズムの変更

このように、ハードフォークは仮想通貨が直面するセキュリティ課題を克服し、持続的に発展していくために不可欠なプロセスと言えるでしょう。

③:コミュニティの意思を反映できる

特定の管理者がいない仮想通貨において、システムの方向性はコミュニティの議論によって決定されます。しかし、今後の開発方針などを巡って意見が対立し、合意形成が困難になるケースも少なくありません。

このような状況でコミュニティの意思を直接的に反映させる手段となるのが、ハードフォークです。

これにより、意見が異なるグループがそれぞれの理想とするブロックチェーンを追求し、分裂という形で独自の道を進めるようになります。

これは、中央集権的な組織にはない、分散型ネットワーク(DAO)ならではの大きなメリットと言えるでしょう。

ハードフォークのデメリット


技術的なアップグレードが魅力のハードフォークですが、理解しておくべきデメリットがいくつか存在します。

ここでは、以下の3つのデメリットを紹介します。

  1. コミュニティが分裂する
  2. 利用者や市場の混乱を招く
  3. 開発リソースが分散する

①:コミュニティが分裂する

ハードフォークは、仕様変更に関する意見の対立が原因で、開発者やユーザーなどのコミュニティが分裂してしまうデメリットがあります。

ブロックチェーンが恒久的に分岐することで、これまで一つのプロジェクトを支えてきたコミュニティが旧チェーンと新チェーンの支持派に分かれてしまうのです。

この分裂は、開発リソースの分散やコミュニティ間の対立を引き起こし、プロジェクトの推進力を弱める原因となります。また、内部の対立はプロジェクト全体の信頼性を損ない、仮想通貨の価値にも悪影響を及ぼす可能性があります。

②:利用者や市場の混乱を招く

ハードフォークは、利用者や市場に大きな混乱を招く可能性があります。実行が近づくと、多くの取引所はリスク回避のため対象通貨の入出金を一時停止します。

しかし、海外の仮想通貨取引所によって対応方針が異なるため、利用者は自身の資産をどう扱えばよいか混乱しがちです。

市場では新通貨への期待とコミュニティ分裂への不安が交錯し、価格が乱高下しやすくなります。このような価格変動や情報の混乱は、市場全体を不安定にさせる要因となります。

③:開発リソースが分散する

ハードフォークによってプロジェクトが2つに分裂すると、開発リソースが分散する問題も生じます。これまで1つの目標に向かっていた開発者たちが、新旧どちらのチェーンを支持するか選択を迫られるためです。

その結果、1つのプロジェクトに集中されていた開発力や時間が、2つのプロジェクトに分けられてしまいます。それぞれのチェーンで機能改善やバグ修正のスピードが遅くなる可能性があります。

このリソースの分散は、結果的に両方のプロジェクトの成長を妨げる要因となりかねません。

ハードフォークの過去の事例


ハードフォークの過去の事例

ハードフォークの過去の事例について、以下の5つを紹介します。

  1. ビットコインとビットコインキャッシュの分裂
  2. イーサリアムとイーサリアムクラシックの分裂
  3. ビットコインキャッシュとビットコインSVの分裂
  4. ビットコインとビットコインゴールドの分裂
  5. イーサリアムとイーサリアムPoWの分裂

①:ビットコインとビットコインキャッシュの分裂

2017年8月、ビットコインはハードフォークによって「ビットコインキャッシュ(BCH)」という将来性が期待される仮想通貨を生み出しました。

この分裂の主な原因は、ビットコインの取引量増加に伴う送金遅延や手数料高騰といった「スケーラビリティ問題」への解決策を巡るコミュニティ内の意見対立です。

取引データを圧縮して効率化を図りたいビットコインの中核開発者に対し、ブロックサイズ自体を大きくして処理能力を上げたいマイナー(採掘者)グループが反発しました。

最終的に、ブロックサイズの拡大を主張するグループがハードフォークを実行し、ビットコインキャッシュが誕生したのです。

この出来事は、仮想通貨の方向性を巡るコミュニティの対立が、ブロックチェーンの分裂にまで発展することを示す代表的な事例となりました。

②:イーサリアムとイーサリアムクラシックの分裂

2016年7月、イーサリアムは大規模なハッキング事件「The DAO事件」への対応を巡り、ハードフォークによって「イーサリアムクラシック(ETC)」と分裂しました。

事件で盗まれた巨額の資金を取り戻すため、イーサリアム開発者の多数派は、取引記録をハッキング前に巻き戻すハードフォークを実施。これが現在のイーサリアム(ETH)です。

しかし、「ブロックチェーンは不変であるべき」と考える一部のグループはこの介入に反発し、元のブロックチェーンを維持し続けました。

その結果、元のチェーンは「イーサリアムクラシック」として存続することになり、思想の違いが原因でコミュニティとブロックチェーンが分裂する事例となったのです。

③:ビットコインキャッシュとビットコインSVの分裂

2018年11月、ビットコインから分裂したビットコインキャッシュ(BCH)が、今度は内部の対立によってさらに分裂し、「ビットコインSV(BSV)」が誕生しました。

この分裂の原因は、BCHの今後のアップデート方針を巡る2つの開発チーム間の深刻な対立です。

  • ビットコインABC派:スマートコントラクトなどの新機能を実装し、BCHの多機能化を目指すグループ。
  • nChain派:ビットコインの原点(サトシナカモトのビジョン)に回帰し、ブロックサイズを大幅に拡大して決済能力の向上を目指すグループ。

両者の主張は相容れず、合意形成が不可能となったため、予定されていたハードフォークのタイミングでチェーンが2つに分岐しました。

分岐直後には、どちらが正当なチェーンかをかけてマイニングパワー(計算能力)を競い合う「ハッシュウォー」も発生しましたが、最終的には両者が別の仮想通貨として存続する結果となりました。

④:ビットコインとビットコインゴールドの分裂

2017年10月、ビットコインはハードフォーク(仕様変更)を経て、新たに「ビットコインゴールド(BTG)」を生み出しました。

この分裂の主な原因は、ビットコインのマイニング(採掘)が、ASICという高性能な専用機械を持つ一部の業者に独占され、中央集権化しつつあったことへの懸念です。

そこで、一部の開発者グループが、従来のビットコインとは異なり、一般的なパソコンのGPUでもマイニングに参加しやすくすることで、非中央集権的な性質を取り戻そうと仕様変更を提案しました。しかし、この提案はビットコインコミュニティ全体の合意を得られませんでした。

その結果、新仕様を支持するグループが分裂する形でハードフォークを実行し、ビットコインゴールドが誕生しました。これは、マイニングのあり方を巡る思想の違いがブロックチェーンの分裂につながった事例です。

⑤:イーサリアムとイーサリアムPOWの分裂

2022年9月、イーサリアムは大型アップグレード「The Merge」を実施し、取引承認の仕組みを、従来の「Proof of Work(PoW)」から、省エネな「Proof of Stake(PoS)」へ移行しました。

性質は従来のイーサリアムとは異なります。主な違いは以下の通りです。

  • Proof of Work(PoW):膨大な計算問題を最初に解いた「マイナー」が取引を承認する。高いセキュリティを維持する一方、大量の電力を消費する。
  • Proof of Stake(PoS):対象の暗号資産を多く保有する「バリデーター」が承認権を得やすい。電力消費が大幅に少なく、より環境負荷が低い。

この変更は、計算能力を提供して報酬を得ていた従来のマイナーたちの収益機会を失わせるものでした。

これに反発した一部のマイナーらは、PoWの仕組みを維持するためにハードフォーク(分裂)を実行。その結果、PoWを継続する新たなブロックチェーン「イーサリアムPoW(ETHW)」が誕生しました。

この出来事は、技術仕様の変更がマイナーの経済的利害と衝突し、コミュニティの分裂を招く事例となりました。

ハードフォークによるリスク


ビットコインからビットコインキャッシュへの分裂

ハードフォークが実施される際、いくつかリスクが存在します。取引を行う場合、以下のような点に注意しましょう。

リプレイアタックのリスク

リプレイアタックのリスク

リプレイアタックとは、ハードフォークで分裂した一方のチェーンで行った送金が、悪意ある第三者によってもう一方のチェーンで勝手に再現(リプレイ)されてしまう攻撃です。

ブロックチェーンの分岐後、両チェーンで取引データの形式が同じ場合にこの問題が発生しやすくなります。例えば、新しい通貨を送金したつもりが、意図せず元の通貨も同じ宛先に送られてしまうといった被害が起こり得ます。

通常、このリスクを防ぐために「リプレイプロテクション」という保護機能が実装されますが、対策が不十分なハードフォークでは利用者が資産を失う危険性があるため注意が必要です。

急激な価格変動のリスク

急激な価格変動のリスク

ハードフォークは、対象の仮想通貨の価格が乱高下する大きなリスクを伴います。価格が不安定になる主な要因は以下の通りです。

  • フォーク前の価格高騰:新通貨がもらえることへの期待感から投機的な買いが集まり、価格が急騰する傾向があります。
  • フォーク後の価格暴落:新通貨が付与された直後の利益確定売りや、分裂による将来への不安から価格が急落するリスクがあります。

このように、期待と不安が交錯することで仮想通貨の価格予想は非常に不安定になり、高値で投資してしまった場合に大きな損失を被る危険性があります。

脆弱性が発生するリスク

脆弱性が発生するリスク

ハードフォークは、プログラムの変更に伴う予期せぬバグやセキュリティ上の脆弱性が生まれるリスクを抱えています。

ソースコードの書き換え時にミスが紛れ込んだり、テストが不十分だったりすると、ハッカーの攻撃対象となる欠陥が残ってしまう可能性があります。

また、分裂によってマイナーが分散し、チェーンの計算能力(ハッシュレート)が低下することも大きな問題です。

ハッシュレートが低いチェーンは、悪意ある攻撃者が不正な取引を行う「51%攻撃」を受けやすくなります。これらの脆弱性は、利用者の資産を危険に晒す深刻な事態に繋がりかねません。

まとめ


本記事では、仮想通貨ハードフォークの仕組みやメリット・デメリット、過去の分裂事例、そしてそれに伴う様々なリスクに至るまで、網羅的に解説してきました。

ハードフォークとは、スケーラビリティ問題の解決や新機能の実装など、仮想通貨アルトコインが大きく進化するために不可欠なアップデート手法です。それは時に、コミュニティ内の深刻な対立を解消するための最終手段ともなり得ます。

しかし、その影響は非常に大きく、コミュニティの分裂や市場の混乱、リプレイアタックといった技術的リスクを招く「諸刃の剣」でもあります。

ハードフォークの発表があった際には、これらのデメリットやリスクを十分に理解し、仮想通貨取引所の対応などを確認することが、自身の資産を守る上で不可欠です。

仮想通貨バブルでは、今後も様々なプロジェクトでハードフォークが行われる可能性があります。本記事を参考に、ハードフォークというイベントが持つ機会とリスクを理解し、十分な調査を行うことをおすすめします。

ハードフォークとは?に関するよくある質問


仮想通貨フォークとは?

ハードフォークするとどうなる?

ハードフォークで価格は上がる?下がる?

ハードフォークで得た仮想通貨に税金はかかる?

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